
コーヒーを愛する皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
「WHITE COFFEE 定期便」と一緒にお届けしている、ショートストーリー【私とコーヒーの物語】のご紹介です。
今回は、二十杯目「旅立ち」です。
ちょっとだけ他のことを忘れて、ほんのりくつろぎながら読んでいただけたら嬉しいです!
二十杯目「旅立ち」
娘が「パパ、私もコーヒー一緒に作る〜。」と言った日から、一体どれくらいの年月が過ぎただろう。
道具を壊されるのでは、火傷するのではないかと落ち着かず、内心〝一人でやらせてくれよ…〟と、思ったものの、気がつけば数年。
それは、早起きが好きな父と娘だけの、温かくも静かな時間だった。
身長も伸び、感情表現も豊かになりどんどん成長していく我が子。
思春期に入り言葉数が減っても、朝の決まった時間には必ずキッチンに集合し毎日を始めた。
初めて淹れたコーヒーの香りを、「いいかおり!」と言い、「きれいないろ…」と、言いながら、大切そうに宝物でも見るようにコーヒーカップを持った小さな小さな手。
ペロっと舐め、「うげ…」と、言った瞬間を、何度思い返し微笑んだだろう。
そんな娘がある朝「パパ、私、留学したいの。」と、告げた。
高校2年生になったばかりの、季節外れの雪の降る朝だった。
海外の大学に挑戦したいと言った彼女の決意は固く、反対なんかできないほど、まさしく寝る間も惜しみ学び、宣言した通り合格することができた。
9月の入学までの間、アルバイトをしながら留学の準備をする娘とのコーヒーを淹れる作業は、甘く切なさをまとい、旅立ちが近付くにつれて澄んだ、酸味のある香りを漂わせていった。
旅立ちの日、「寂しくなんかない…。」と、言いながら、娘の姿が見えなくなる前から泣き始めた父を笑い、
「ママ、行ってくるね!パパのこと、よろしく!!」と、勇ましく、さっぱりと旅立った我が子。
その姿を見送りながら、「…マキは、君に似て強いからきっと大丈夫だな。」と、言うと、
「そうね。あなたに似てなんでも楽しめる子だしね。…明日からは、私の為にコーヒーを淹れてね。」
と、言う妻の瞳に涙が溜まっているのを見て、また泣いた。
なあ、マキ。君が僕に楽しむことを教えてくれたんだ。
間違っても失敗しても、楽しむことを教えてくれたのは君だったんだよ。いつだって、君は僕の光だった。
行ってらっしゃい、僕の可愛い先生。
空を見上げると、朝焼けが優しく今日を始めようとしていた。
それは淡くも強く、希望に満ちた朝だった。
子供を抱きしめてると思っていたけれど、もしかして自分が抱きしめられているのかな。って、ふと感じた瞬間を思い出しました。…可愛い先生。泣けます!大切は人の旅立ちを、温かく見送れる強い心が欲しいものです😭
皆様の思い出の風景に、寄り添える存在でありますように✨
ではでは…今後とも「WHITE COFFEE 定期便」をよろしくお願いいたします☕️
前回のショートストーリーはこちらから


WHITE COFFEE 定期便 2025年4月号でお届けした、ショートストーリー【私とコーヒーの物語】 をぜひお楽しみください!