
コーヒーを愛する皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
「WHITE COFFEE 定期便」と一緒にお届けしている、ショートストーリー【私とコーヒーの物語】のご紹介です。
今回は、十二杯目「金魚の恋」です。
ちょっとだけ他のことを忘れて、ほんのりくつろぎながら読んでいただけたら嬉しいです!
十二杯目「金魚の恋」
私は恋をしている。相手は水槽の外の彼。
彼は、私を眺めながらコーヒーをのむ時を大切にしてくれていた。
私の泳ぐ姿を、美しいと、言う。踊っているようだと。その度に、もっと見てほしいと願う。
その声を聞きたくて、私はヒレを揺らし、肌がもっと鮮やかな赤になることを願った。
寂しくなんてなかった。
ある日、彼にやたらとくっつく人間が部屋にやってきた。
その日から、彼との2人っきりの時間は少しずつ減り、彼がコーヒーを飲みながら見つめる相手は私ではなくなった。
ねえ、こっちを見て…
「金魚ちゃん可哀想だから、はい、パートナー。」
夏祭りですくってきたという金魚。彼に渡すのをみて、身が燃えるように感じた。
「え?入れないよ。」
「え??」
「この子は1人で完璧なんだよ。」
「でも、寂しそうじゃない?」
「いや、全然。病気になったら嫌だし。」
「えーーー?でも、あっ君だって1人は嫌でしょ?」
「…1人?うーん…嫌…ではないな。そもそも1人ではなかったし。」
「え??」
そこからの展開は早く、連れてこられた金魚と一緒に彼女は帰っていった。
彼はコーヒーを淹れ、以前のように目の前に座る。
「ったく。よくおばあちゃんが言ってたんだよ。
あっ君の〝宝物〟を、
大事に大事にしてくれる子を見つけるんだよ。って。
…うん。やっぱり完璧だ。」
夏の夕日が、部屋を照らす。なんて綺麗で、完璧な一瞬。
もう十分だ。何も悔いはない。この恋は間違いなくハッピーエンドだもの。
ねえ、あっ君。どうか目を逸らさないで。
私は踊る。あなたの視線を独り占めしたくって、舞い続ける。
この身を赤く染め、1秒でも長く、あなたの傍で生きる事を願って。
なんて切ないんだろう…ハッピーエンドなのに、何でこんなにも胸が締め付けられるのだろう…と、届いた原稿を読みながら、我が家で飼っている金魚を見つめてしまいました。…まさか、君たちも僕に恋を?と、一瞬考えましたが、『エサちょーだい!』『水槽の掃除してよー。』くらいしか想像できず😅自分には文才が無いことを、改めて痛感いたしました。
皆様のコーヒータイムが、優しく温かなものでありますように✨
今後とも「WHITE COFFEE 定期便」をよろしくお願いいたします☕️
前回のショートストーリーはこちらから


WHITE COFFEE 定期便 2024年8月号でお届けした、ショートストーリー【私とコーヒーの物語】 をぜひお楽しみください!